「脂漏性皮膚炎」について、皮膚科専門医が解説しました。

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脂漏性皮膚炎

各疾患の説明

最終更新日:2026.09.18

頭皮のかゆみ・フケは脂漏性皮膚炎かも?マラセチア菌との関係とセルフチェック・治療法

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頭皮のフケが急に増えた、顔の小鼻や眉のまわりが赤くカサつく――そんな症状に心当たりはありませんか。「ただの乾燥だろう」「フケ症だから仕方ない」と自己判断で市販のシャンプーだけを試し続け、なかなか改善しないというケースは少なくありません。実はこうした症状の背景には、脂漏性皮膚炎という皮膚疾患が隠れていることがあります。本記事では、脂漏性皮膚炎が起こる仕組みと、自分でできるセルフチェック、治療の考え方について詳しく整理します。

脂漏性皮膚炎とは

脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多い部位に繰り返し起こる慢性の炎症性皮膚疾患です。頭皮、眉、鼻の脇、耳の周囲、胸の中央など、皮脂腺が集まる場所に赤みや脂っぽい黄色がかった鱗屑(フケのようなもの)が現れます。かゆみを伴うこともあれば、ほとんど感じない場合もあり、症状の出方には個人差があります。
発症しやすい時期には二つの山があるとされています。一つは生後間もない乳児期で、もう一つは思春期以降から中高年にかけての成人期です。乳児期は母親由来のホルモンの影響で皮脂の分泌が一時的に多くなることが関係していると考えられており、多くは生後数か月で自然に落ち着いていきます。成人期の脂漏性皮膚炎は、慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返しやすく、根気強く付き合っていく必要がある点が乳児期のものとは異なります。
国立成育医療研究センターの発表によれば、乳児脂漏性皮膚炎は乳児のおよそ3人に1人にみられる炎症性疾患とされています。(出典:国立成育医療研究センター プレスリリース)成人領域でも、忙しい世代を中心に一定数の患者さんが皮膚科を受診しており、決して珍しい疾患ではありません。

部位ごとに異なる症状の現れ方

脂漏性皮膚炎は全身のどこにでも出るわけではなく、皮脂腺が発達している部位に集中して現れる傾向があります。
頭皮では、フケが目立つタイプから、地肌が赤くなりかゆみを伴うタイプまで幅があります。フケが乾いた粉状であれば単純な乾燥の可能性もありますが、脂っぽくベタついた黄色みのある鱗屑がこびりつくように付着している場合は、脂漏性皮膚炎を疑うサインの一つです。
顔では、眉の周囲、鼻の脇から頬にかけてのTゾーン、まぶたの縁などに赤みと軽い皮むけが出やすい部位です。人によっては眉毛の中がフケっぽくなったり、まつ毛の生え際が赤くなったりすることもあります。
そのほか、耳の中や耳の後ろ、胸の中央、脇の下など皮脂腺が多い場所にも症状が出ることがあります。範囲が広がったり、症状が長引いたりする場合は、自己判断で放置せず皮膚科での確認をおすすめします。

原因は一つではない――マラセチア菌・皮脂・生活習慣の関わり

脂漏性皮膚炎のはっきりとした原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が複雑に関係し合って発症・悪化すると考えられています。

マラセチア菌と皮脂バランス

皮膚には誰にでもマラセチアという常在菌が存在しています。この菌が皮脂に含まれる中性脂肪を分解する過程で遊離脂肪酸が作られ、これが皮膚を刺激して炎症を引き起こすと考えられています。皮脂の量そのものよりも、皮脂に含まれる成分の質やマラセチア菌の増え方が、症状の強さに関わっているとされています。単に「皮脂が多いから」という単純な話ではなく、皮脂の質と常在菌のバランスという、目に見えにくい要因が背景にある点が、この疾患を理解するうえでのポイントです。

ストレス・睡眠不足・体調不良との関係

過労やストレス、不規則な生活、風邪をひいた後や入院など体調を崩したタイミングで症状が悪化しやすいことも知られています。ストレスや睡眠不足は自律神経やホルモンバランスに影響し、皮脂の分泌や免疫の働きを乱すことがあるためです。「最近忙しくて疲れがたまっている」というときに症状が出やすいと感じる方も少なくありません。近年は在宅勤務やマスク着用の習慣化に伴う肌環境の変化、生活リズムの乱れなどを背景に、これまで発症の少なかった年代や性別でも相談が増えているとの報告もあります。

ホルモンバランスの影響

皮脂の分泌量は男性ホルモンの影響を受けやすく、もともと皮脂分泌が多い体質の方は脂漏性皮膚炎を起こしやすい傾向があります。思春期に皮脂分泌が急激に増える時期や、更年期などホルモンバランスが変化する時期にも、症状の出方が変わることがあります。

季節・乾燥・スキンケアの影響

秋から冬にかけての乾燥した時期や、逆に汗をかきやすい時期にも症状が変化しやすくなります。洗浄力の強すぎるシャンプーやクレンジングで皮脂を取りすぎてしまうと、肌が乾燥を補おうとしてかえって皮脂の過剰分泌を招くこともあるため、スキンケアの方法自体を見直す必要がある場合もあります。整髪料やクリームなど油分を多く含む製品が頭皮や顔に残り続けることも、悪化のきっかけになり得ます。

セルフチェック――こんな症状は脂漏性皮膚炎かも

次のような症状が当てはまる場合、脂漏性皮膚炎の可能性があります。

脂漏性皮膚炎に多い特徴

  • 【症状が出る場所】
    頭皮、眉、鼻の脇、耳の周囲、胸の中央など皮脂の多い部位
  • 【見た目】
    赤みに、脂っぽく黄色がかった鱗屑が付着
  • 【かゆみ】
    ある場合とない場合がある
  • 【経過】
    良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性経過
  • 【悪化のきっかけ】
    疲労、ストレス、睡眠不足、季節の変わり目

似た症状を起こす皮膚疾患もいくつかあり、見た目だけで区別するのが難しいことがあります。
単純なフケ症や乾燥性皮膚炎では、鱗屑は白っぽく乾いていることが多く、脂っぽさはあまり目立ちません。保湿を中心としたケアで改善しやすいのが特徴です。
酒さは、頬や鼻を中心に赤みや毛細血管の拡張が目立つ疾患で、脂漏性皮膚炎のような脂っぽい鱗屑を伴わないことが多いとされます。ほてりや熱感を伴いやすく、香辛料やアルコール、気温差などで顔がほてるように赤くなるという方は、酒さの可能性も考えられます。
アトピー性皮膚炎は強いかゆみを伴うことが多く、皮膚の乾燥やバリア機能の低下が背景にある点が脂漏性皮膚炎とは異なります。
これらはあくまで一般的な傾向であり、実際には複数の疾患が合併していることや、見た目だけでは判断がつきにくいケースも少なくありません。セルフチェックはあくまで受診の目安とし、症状が長引く場合や範囲が広がる場合は、自己判断を続けずに皮膚科で相談してください。

体調全体を整えることの大切さ

脂漏性皮膚炎は皮膚だけの問題として捉えられがちですが、先に述べたとおり、疲労やストレス、生活リズムの乱れといった全身の状態と結びついて悪化することが少なくありません。皮膚の治療と並行して、睡眠不足や体調不良が続いていないかを見直すことも再発予防につながります。皮膚症状のほかに倦怠感や体調不良が続いている場合は、当院の内科診療(生活習慣病・一般内科)で全身の状態を確認することもご検討ください。皮膚の症状を入り口に、生活全体を見直すきっかけにしていただければと思います。

治療の考え方

脂漏性皮膚炎の治療は、原因菌であるマラセチアの増殖を抑えることと、皮膚の炎症を鎮めることの両面から行っていきます。

  • 抗真菌薬の外用薬:マラセチア菌の増殖を抑える
  • 弱めのステロイド外用薬:炎症が強い時期に短期間使用する
  • 抗真菌成分入りのシャンプーや洗浄料:頭皮の症状に用いる

炎症が強い急性期には外用薬で症状を落ち着かせ、症状が落ち着いた後の維持期には、抗真菌成分を含むシャンプーなどで再燃を防ぐという二段階の考え方で治療が進めることが一般的です。症状が落ち着いた後も再発しやすい疾患であるため、炎症が治まった段階でスキンケアを継続し、悪化のサインが出たら早めに対応することが、長期的な症状のコントロールにつながります。
自己判断で市販薬を使い続けて改善しない場合や、症状を繰り返す場合は、早めに当院の皮膚科を受診してください。

日常生活でできるセルフケア

治療と並行して、次のような生活面の工夫も症状の安定に役立ちます。
洗浄力の強すぎる洗顔料やシャンプーは避け、ぬるま湯でやさしく洗うことを基本としてください。ゴシゴシとこすり洗いをすると、皮膚のバリア機能を余計に傷めてしまうことがあります。シャンプーやクレンジングをした後は、すすぎ残しがないよう丁寧に洗い流すことも大切です。
睡眠時間を確保し、疲労をため込まない生活リズムを意識することも重要です。夜更かしが続いた翌週に症状が悪化したと感じる方は、まず睡眠時間の確保から見直してみてください。
食事の面では、脂っこい食事や刺激の強い香辛料、糖質の多いお菓子類を摂りすぎないようにし、野菜や魚などを取り入れたバランスの良い食事を心がけてください。整髪料や油分の多いスキンケア用品を長時間つけたままにしないことも、皮膚への負担を減らすうえで役立ちます。

よくある質問

Q. 脂漏性皮膚炎は完治しますか。 

体質的な要素が関わるため、根本的に治すというより、良い状態を保ちながら付き合っていく疾患と捉えるほうが実情に近いといえます。適切な治療とスキンケアで症状をコントロールすることは十分可能です。

Q. 市販のフケ用シャンプーだけで様子を見てもよいですか。 

軽度であれば有効な場合もありますが、赤みや鱗屑が続く、範囲が広がるといった場合は自己判断を続けず、皮膚科を受診してください。

Q. 頭皮のフケがひどいと薄毛につながりますか。 

脂漏性皮膚炎を放置すると頭皮環境が乱れ、フケや炎症が続くことで髪への影響が懸念される場合があります。フケや赤みが長引く場合は、早めに皮膚科へご相談ください。

Q. 大人になってから急に症状が出ることはありますか。 

これまで症状がなかった方でも、過労やストレス、生活リズムの乱れなどをきっかけに、成人になってから初めて症状が現れることがあります。急な発症であっても、経過や部位を確認しながら診断していきますので、気になる場合はご相談ください。

まとめ

脂漏性皮膚炎は、マラセチア菌と皮脂のバランス、ストレスや睡眠不足といった生活習慣が絡み合って起こる慢性の皮膚疾患です。頭皮のフケや顔の赤みが続く場合、単なる乾燥や体質と自己判断せず、セルフチェックを参考にしながら、必要に応じて皮膚科への相談を検討してください。皮膚の症状だけでなく体調全体を整えることも、長期的な症状の安定につながります。


本記事は一般的な医学情報の紹介を目的としたものであり、個々の症状の診断や治療方針を示すものではありません。実際の治療については、必ず医師にご相談ください。

【著者 / 医師名】八尋 知里

資格
  • 日本皮膚科学会 皮膚科専門医
  • 緩和ケア研修会終了
専門分野

皮膚科疾患

最終更新日:2026.09.18

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