最終更新日:2025.09.19
『アトピー性皮膚炎』について、皮膚科専門医が解説しました。

定義
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis, AD)は、かゆみを伴う慢性・再発性の湿疹を特徴とする炎症性皮膚疾患です。
アトピー素因(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎などを合併しやすい体質)と関連します。
主な症状
- かゆみ(pruritus):夜間に増悪しやすい
- 湿疹性皮疹:紅斑、丘疹、浸潤・苔癬化、鱗屑、痂皮
- 分布の特徴
乳児期:顔、頭、体幹
小児期:肘窩・膝窩などの屈曲部
成人期:顔(特に眼周囲)、頸部、上半身、屈曲部 - 慢性化すると皮膚がごわごわ厚くなる(苔癬化)
病態(発症メカニズム)
アトピー性皮膚炎は以下の要因が複雑に関与しています:
皮膚バリア機能低下
- フィラグリン遺伝子変異などで皮膚の保湿機能が低下
- 外部抗原や刺激物が侵入しやすくなる
免疫学的異常
Th2優位の免疫応答 → IL-4, IL-13 などが増加
IgE抗体産生や炎症を促進
環境因子
- ハウスダスト、ダニ、花粉、食物アレルゲン、ストレスなど
かゆみ・掻破の悪循環
- 掻くことで皮膚障害が悪化 → バリア機能さらに低下 → 炎症持続
診断方法
- 臨床診断が基本(血液検査や皮膚生検は補助的)
- 日本皮膚科学会の診断基準(例:厚生省研究班基準)
主症状(必須):
- かゆみ
- 慢性・反復性の経過
- 特徴的な皮疹・分布
上記すべてを満たすことで診断
補助所見:家族歴・既往歴(喘息・鼻炎など)、IgE高値、好酸球増多
治療方法
薬物療法
基本は「保湿+適切な強さの外用薬」で、症状に応じてステップアップ/ダウンします。
- 【外用療法(基本)】
ステロイド外用薬(抗炎症作用)
タクロリムス軟膏・デルゴシチニブ軟膏など(免疫抑制薬、JAK阻害薬)
保湿剤(ワセリン、ヘパリン類似物質など)でバリア回復 - 【内服療法】
抗ヒスタミン薬(かゆみ軽減)
シクロスポリン、JAK阻害薬(バリシチニブ、ウパダシチニブなど)重症例 - 【生物学的製剤】
デュピルマブ(抗IL-4Rα抗体)、トラロキヌマブ(抗IL-13抗体)
軽症
- 【基本治療】
スキンケア(保湿、刺激回避) - 【外用薬】
ステロイド外用(弱〜中等度) or タクロリムス軟膏(顔など) - 【追加治療(必要時)】
抗ヒスタミン薬(かゆみ対策)
中等症
- 【基本治療】
スキンケア継続 - 【外用薬】
ステロイド外用(中等度〜強力)、タクロリムス/デルゴシチニブ軟膏併用可 - 【追加治療(必要時)】
光線療法、抗アレルギー薬
重症
- 【基本治療】
スキンケア徹底 - 【外用薬】
ステロイド外用(強力〜最強)、免疫抑制外用薬を併用 - 【追加治療(必要時)】
シクロスポリン内服、JAK阻害薬、デュピルマブなど生物学的製剤
最重症・難治例
- 【基本治療】
上記に加えて - 【追加治療(必要時)】
多職種連携(皮膚科+小児科/内科)、心理的サポート、長期免疫抑制療法を検討
外用ステロイドのランク(一覧)については、以下の通りです。
最強(ストロンゲスト)
【主な薬剤例】
ジフロラゾン酪酸エステル(ダイアコート)、クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート)
【使用部位・特徴】
厚い皮疹、体幹・四肢の重症病変に短期間使用
非常に強力(ベリーストロング)
【主な薬剤例】
モメタゾンフランカルボン酸エステル(フルメタ)、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(アンテベート)、ジフルコルトロン吉草酸エステル(ネリゾナ)、ジフルプレドナート(マイザー)
【使用部位・特徴】
体幹・四肢の中等症〜重症病変
強力(ストロング)
【主な薬剤例】
ベタメタゾン吉草酸エステル(リンデロンV)、フルオシノロンアセトニド(フルコート)、デキサメタゾン吉草酸エステル(ボアラ)、デキサメタゾンプロピオン酸エステル(メサデルム)
【使用部位・特徴】
比較的広く使える標準ランク
中等度(ミディアム)
【主な薬剤例】
ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド)、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(リドメックス)、トリアムシノロンアセトニド(レダコート)
【使用部位・特徴】
顔・首・屈曲部など皮膚の薄い部位に使用しやすい
弱い(ウィーク)
【主な薬剤例】
プレドニゾロン(プレドニンゾロン軟膏)
年齢ごとの皮膚症状の特徴については、以下の通りです。
乳児期(〜2歳)
【好発部位】
顔(頬・口周囲)、頭部、体幹
【特徴】
滲出性紅斑、かさぶた、湿潤しやすい
幼小児期(2〜12歳)
【好発部位】
肘窩・膝窩など屈曲部、首、耳周囲
【特徴】
乾燥性、苔癬化(皮膚が厚く硬くなる)、掻き壊しあり
思春期〜成人期
【好発部位】
顔(特に眼周囲)、頸部、上胸部・背部、屈曲部
【特徴】
慢性の苔癬化、乾燥・落屑、色素沈着・脱失が目立つ
(2)スキンケア
- 入浴・シャワーで皮膚を清潔に
- 毎日保湿剤を塗布し、バリア機能を補う
入浴・洗浄
【ポイント】
ぬるめのシャワー・入浴で汗や汚れを落とす。石けんは低刺激・弱酸性を選び、こすらず泡で洗う。
保湿
入浴後5分以内に保湿剤を全身に塗布。ワセリン・ヘパリン類似物質・セラミド配合製剤などを毎日継続。
衣類
綿素材がおすすめ。ウールや化学繊維は避ける。洗濯は刺激の少ない洗剤を使い、柔軟剤や香料は控える。
爪の管理
爪を短く切り、掻き壊しを防止。小児では就寝時に手袋やミトンも有効。
環境整備
ダニ・ハウスダスト対策(布団乾燥・掃除機)、ペットや花粉の対策も大切。
生活習慣
十分な睡眠、ストレス軽減、バランスのよい食事を心がける。過度な食事制限はしない。
(3)環境因子への対応
- ダニ・ハウスダスト対策(掃除・布団乾燥など)
- 食物アレルゲンは必要な場合のみ除去(自己判断での過度な食事制限は避ける)
日常生活上の注意点
- 保湿を毎日継続(乾燥防止が最重要)
- 掻破を防ぐ工夫:爪を短く切る、手袋や包帯など
- 衣類:木綿など刺激の少ない素材を選ぶ
- 発汗後は速やかにシャワー・着替え
- ストレス・睡眠不足の回避(悪化因子になる)
- アレルゲン回避:花粉、ダニ、ペットなどに注意
- 過度な食事制限は避ける:栄養バランスを維持する
まとめ
アトピー性皮膚炎は「皮膚バリア異常」と「免疫異常」を背景に、かゆみを伴う慢性湿疹を繰り返す疾患です。治療の基本は 保湿+適切な外用療法 で、重症例では内服や生物学的製剤も用います。生活面では 保湿・清潔・掻破予防 が最も重要です。
大阪市西区の『みなみ堀江クリニック』では、アトピー性皮膚炎を含めたあらゆる皮膚疾患に対して皮膚科専門医の女性医師が適切に対応致します。皮膚症状でお困りの患者さまは。お気軽にご相談ください。