『単純ヘルペス（HSV感染）』について 皮膚科専門医が解説しました！

症状

単純ヘルペスウイルス（Herpes simplex virus infection: HSV）は HSV-1（主に口唇・顔面）と HSV-2（主に性器）に分類されますが、どちらもいずれの部位にも感染し得ます。

初感染

• 潜伏期間：2～10日程度
• 口唇ヘルペス（HSV-1が多い）
  発熱、全身倦怠感
  口唇・口腔粘膜に小水疱 → 潰瘍 → 痂皮化
  初感染時はびまん性に広がることがある（ヘルペス性歯肉口内炎）
• 性器ヘルペス（HSV-2が多い）
  外陰部や肛門周囲に有痛性小水疱 → 潰瘍
  排尿時痛、鼠径リンパ節腫脹
• その他
  角膜炎（樹枝状角膜炎）
  脳炎（特に側頭葉に好発、急性意識障害・痙攣）
  新生児ヘルペス（重篤化しやすい）
  カポジ水痘様発疹症（アトピー性皮膚炎に合併しやすい、再発例もあり）

再発

• ウイルスは三叉神経節・仙骨神経節に潜伏
• 発熱・疲労・紫外線曝露・ストレス・免疫低下などで再活性化
• 同一部位に限局した小水疱 → 数日で痂皮化し軽快

診断

• 臨床診断 特徴的な有痛性小水疱 → 潰瘍 → 痂皮化の経過 再発例は既往歴が参考になる
• 鑑別疾患 口腔：アフタ性口内炎、手足口病、帯状疱疹 性器：梅毒、尖圭コンジローマ、カンジダ症

検査

必要に応じて確定診断のために行う。

• Tzanck試験（ツァンク試験） 水疱内容を塗抹して顕微鏡観察 多核巨細胞を認めればヘルペス属ウイルスを示唆
• 単純ヘルペスウィルス迅速診断キット 帯状庖疹や伝染性膿痂疹などとの鑑別が難しい例で有用
• ウイルス分離・培養 感度が高いが時間を要する
• PCR検査 高感度・高特異度、脳炎診断にも有用
• 抗体検査（IgM・IgG） 初感染の判定や既感染の確認に使用
• 眼病変 フルオレセイン染色で樹枝状潰瘍を確認

治療

(1) 抗ウイルス薬（基本治療）

• アシクロビル（ACV）
• バラシクロビル（VACV）
• ファムシクロビル（FCV）

投与経路・期間は重症度・部位によって異なる。

• 軽症皮膚・粘膜感染：経口
  
• 重症例（脳炎、新生児ヘルペスなど）：点滴静注
  
• 再発抑制療法：性器ヘルペスで頻繁に（概ね年に6回以上）再発する例では長期内服（半年～1年以上）
  
• PIT（Patient Initiated Therapy）：年に3回以上再発する例で、あらかじめ処方された薬剤を初期症状を感じた時点で、患者の判断で服用開始。

(2) 対症療法

• 解熱鎮痛薬
• 局所の清潔保持（石鹸・流水）
• 二次感染予防のため患部を掻かないよう指導

(3) 特殊例

• 単純ヘルペス脳炎：アシクロビル点滴（早期開始が予後を決定）
• 新生児ヘルペス：アシクロビル点滴、集中治療管理
• 角膜ヘルペス：抗ウイルス点眼、ステロイド点眼は禁忌（悪化するため）

単純ヘルペスと帯状疱疹の違い

単純ヘルペス（HSV感染）

• 【原因ウイルス】
  HSV-1（口唇・顔面に多い）HSV-2（性器に多い）
• 【初感染時】
  乳幼児期に口唇・口腔粘膜炎、性器ヘルペスなど
• 【再発機序】
  三叉神経節・仙骨神経節に潜伏し再活性化
• 【好発部位】
  口唇、口腔、性器、角膜など
• 【皮疹の特徴】
  有痛性小水疱が集簇 → 潰瘍 → 痂皮化
• 【再発のパターン】
  同じ部位に繰り返す
• 【年齢分布】
  若年～成人（免疫低下で再燃）
• 【合併症】
  角膜炎、脳炎（側頭葉）、新生児ヘルペス
• 【診断】
  臨床所見、Tzanck試験、PCR、ウイルス培養
• 【治療】
  アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル（内服・点滴）
• 【予防】
  ワクチンなし（再発予防は抗ウイルス薬長期投与）

帯状疱疹（VZV再活性化）

• 【原因ウイルス】
  水痘・帯状疱疹ウイルス（Varicella Zoster Virus, VZV）
• 【初感染時】
  小児期に水痘（水ぼうそう）として発症
• 【再発機序】
  脊髄後根神経節に潜伏し再活性化
• 【好発部位】
  体幹、顔面（特に三叉神経領域）、四肢
• 【皮疹の特徴】
  片側の皮膚分節（デルマトーム）に一致した紅斑・小水疱群
• 【再発のパターン】
  通常は一生に1回（免疫低下時に再発することもあり）
• 【年齢分布】
  高齢者に多い（免疫力低下に伴う）
• 【合併症】
  帯状疱疹後神経痛、角膜炎、顔面神経麻痺、髄膜炎など
• 【診断】
  臨床所見（片側デルマトーム）、PCR、血清抗体価
• 【治療】
  同様に抗ウイルス薬＋鎮痛薬
• 【予防】
  帯状疱疹ワクチン（生ワクチン／不活化ワクチン）で予防可能

単純ヘルペスは「HSV」による 局所反復性の感染症

帯状疱疹は「VZV」による 水痘の既往後の再活性化で、片側デルマトームに沿った皮疹と強い神経痛 が特徴

まとめ

単純ヘルペスは HSV-1/2 による皮膚・粘膜感染で、口唇や性器に有痛性水疱を生じます。診断は臨床症状が主体です。

治療は抗ウイルス薬が中心で、重症例（脳炎・新生児・角膜炎）は早期の専門的治療が必須です。 大阪市西区の『みなみ堀江クリニッククリニック』では、女性の皮膚科専門医があらゆる皮膚症状に対応しております。

大阪市で皮膚科をお探しの患者さまは、お気軽にご相談ください。