最終更新日:2025.09.10
『ニキビ治療』について皮膚科専門医が解説しました!

ニキビ(医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」)は、皮膚の慢性炎症性疾患の一つで、思春期から成人にかけて多くみられる皮膚トラブルです。以下に、ニキビの原因、病態、治療、生活上の注意点について医学的観点から解説します。
原因
ニキビの発症には、主に以下の4つの因子が関与しています:
皮脂の過剰分泌
思春期やホルモンバランスの乱れ(アンドロゲン増加)により、皮脂腺が刺激され皮脂が過剰に分泌されます。
毛穴(毛包)の角化異常
毛穴の入り口(毛包漏斗部)で角質が異常に増殖し、毛穴が詰まりやすくなります。
アクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖
詰まった毛穴内で嫌気性環境が整うと、皮膚常在菌であるアクネ菌が増殖し、炎症を引き起こします。
炎症反応
アクネ菌の代謝産物や、免疫反応によって炎症が起こり、赤みや膿を伴うニキビになります。
病態
ニキビは以下のような段階を経て進行します
- 【コメド(面皰)】初期病変。毛穴が詰まり、皮脂が溜まる。白ニキビ(閉鎖型)、黒ニキビ(開放型)に分類される。
- 【丘疹・膿疱】アクネ菌の増殖と炎症により、赤く腫れたり膿が溜まったりする。
- 【結節・嚢腫】炎症が深部に及び、しこりや硬い腫れとなる。重症化すると瘢痕(クレーター)が残ることもある。
治療薬の種類
ニキビの治療は、病態に応じて以下のように分かれます。
外用薬(塗り薬)
- 【ベピオゲル(過酸化ベンゾイル)】
抗菌作用+角質剥離作用(アクネ菌殺菌、毛穴詰まりの改善) - 【ディフェリンゲル(アダパレン)】
毛穴の角化異常を正常化(コメド予防) - 【エピデュオゲル(過酸化ベンゾイル+アダパレン)】
2剤配合で炎症+コメドの両方に効果 - 【抗菌薬(クリンダマイシンなど)】
アクネ菌の増殖抑制(※耐性菌に注意)
内服薬(飲み薬)
- 【抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)】
中〜重症ニキビに。抗炎症作用もある。 - 【ビタミン剤(B2・B6)】
皮脂分泌の調整、皮膚の新陳代謝促進。 - 【ホルモン治療(※女性、保険適応外)】
低用量ピル、スピロノラクトンなど。ホルモンバランス調整。 - 【イソトレチノイン(※日本未承認)】
重症例に用いられる内服レチノイド。非常に高い効果があるが、副作用や催奇形性あり。要注意。
重症度に応じた治療方法
重症度分類(日本皮膚科学会ガイドライン)
- 【軽症】コメド(白ニキビ・黒ニキビ)主体で、炎症性皮疹(丘疹・膿疱)が5個以下
- 【中等症】炎症性皮疹(丘疹・膿疱)が6~20個
- 【重症】炎症性皮疹(丘疹・膿疱)が21~50個、または結節・嚢腫が少数
- 【最重症】炎症性皮疹が51個以上、または結節・嚢腫が多数
軽症(コメド主体、炎症性皮疹が5個以下)治療法
- 外用治療
- レチノイド系薬剤(アダパレン)
- 主に**面皰(白ニキビ、黒ニキビ)**を予防するために使用します。
- 過酸化ベンゾイル(BPO)(外用)
- 抗菌作用があり、炎症を予防します。
- アゼライン酸(外用※保険適応外)
- コメドの改善に有効。
- 推奨される治療法
- アダパレン(外用レチノイド)または過酸化ベンゾイル(BPO)を主に使用します。
- 外用薬の併用が推奨されます。
治療のポイント
- 定期的に外用薬を使用し、継続的な治療が重要です。
- 軽症の場合は、外用治療で治癒可能です。
中等症(炎症性皮疹が6~20個)治療法
- 外用治療
- 外用レチノイド(アダパレン):コメド予防、炎症抑制
- 過酸化ベンゾイル(BPO):炎症性皮疹の減少に役立ちます。
- 抗菌薬外用(クリンダマイシンなど):膿疱や丘疹が目立つ場合に使用。
- 内服治療
- 内服抗菌薬(テトラサイクリン系:ドキシサイクリン、ミノサイクリン):中等症以上で炎症性皮疹が多くなった場合に使用します。抗菌作用で炎症を抑制。
治療のポイント
外用治療に加えて、内服抗菌薬を併用することが多いです。
重症(炎症性皮疹が21~50個、結節・嚢腫少数)治療法
- 外用治療
- アダパレン(外用レチノイド):炎症の進行を防ぎ、コメド形成を予防。
- 過酸化ベンゾイル(BPO):外用治療の一環として使用。
- 抗菌薬外用(クリンダマイシンなど):局所の膿疱や丘疹に使用。
- 内服治療
- 内服抗菌薬(テトラサイクリン系):ミノサイクリンやドキシサイクリンを使用。
- イソトレチノイン(未承認のため臨床判断※当院では処方していません)
- 重症のニキビに対してはイソトレチノインが使用されることがあります。これにより皮脂腺の働きを抑え、ニキビの原因を根本的に治療できます。
治療のポイント
内服抗菌薬を併用することが多いです。
最重症(炎症性皮疹が51個以上、結節・嚢腫が多数)治療法
- 外用治療
- アダパレン(外用レチノイド):コメド形成を抑制。
- 過酸化ベンゾイル(BPO):外用治療の一環として使用。
- アダパレン+過酸化ベンゾイル
- 内服治療
- 内服抗菌薬(テトラサイクリン系抗生物質)
- イソトレチノイン(アキュテイン等)
- ステロイド局所注射:結節や嚢腫に対して迅速な炎症抑制を目的に行うことがあります。
治療のポイント
イソトレチノインは、非常に重症なニキビに対して使用されます。治療は皮膚科医の管理下で慎重に行う必要があります。※当院では処方していません。 内服抗菌薬の長期使用に関しても注意が必要です。
治療のまとめ
【重症度】 軽症
- 【炎症性皮疹の数】 5個以下
- 【推奨される治療方法】
外用治療(アダパレン、過酸化ベンゾイル)
【重症度】 中等症
- 【炎症性皮疹の数】 6~20個
- 【推奨される治療方法】
外用治療(アダパレン、過酸化ベンゾイル、抗菌薬外用)+内服抗菌薬(ドキシサイクリンなど)
【重症度】 重症
- 【炎症性皮疹の数】 21~50個
- 【推奨される治療方法】
外用治療(アダパレン、過酸化ベンゾイル、抗菌薬外用)+内服抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリン)+イソトレチノイン(臨床判断)
【重症度】 最重症
- 【炎症性皮疹の数】 51個以上
- 【推奨される治療方法】
外用治療(アダパレン、過酸化ベンゾイル)+内服抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリン)+イソトレチノイン+ステロイド局所注射(適宜)
生活上の注意点
日常生活での工夫も、ニキビの予防・改善に非常に重要です。
洗顔
- 過剰な洗顔やゴシゴシこすらない(朝・晩の2回が基本)
- 低刺激の洗顔料を使用し、皮脂の落としすぎに注意
スキンケア
- ノンコメドジェニック製品を選ぶ
- 保湿は重要(乾燥でも皮脂分泌が増加)
- 紫外線対策(日焼けは炎症後色素沈着の原因に)
食生活
- 高脂質・高糖質の食事を避け、野菜・魚・ビタミン類を多く取る
- 牛乳やチョコレートが悪化因子になることもある(個人差あり)
睡眠・ストレス管理
- 睡眠不足・ストレスはホルモンバランスを乱し、皮脂分泌を増加させる
その他
- 髪が顔にかからないようにする(整髪料の影響も)
- マスクやスマホなど、皮膚と接触する物を清潔に保つ
- ニキビを潰さない(炎症・瘢痕の原因に)
まとめ
ニキビは早期に治療することで、後遺症(瘢痕や色素沈着)のリスクを減らせます。自分の状態に合わせた治療法を選ぶことが大切です。また、症状が落ち着いてきても継続的な治療が必要で、治療中は定期的に皮膚科での評価を受け、適切な調整を行うようにしましょう。 大阪市西区の『みなみ堀江クリニック』では皮膚科専門医が、ニキビ治療も積極的に行っております。ニキビでお悩みの患者さまは、お気軽にご相談ください。